訴状
2009年7月16日
東京地方裁判所 御中
原告ら訴訟代理人
弁 護 士 日置 雅晴
同 富田 裕
同 花澤 俊之
原 告
(中略)
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂三丁目2番5号SHKビル4階
神楽坂キーストーン法律事務所(送達場所)
電 話 03-5228-0342 FAX 03-5228-0392
原告ら訴訟代理人
(中略)
〒164-8501 東京都中野区中野四丁目8番1号
被 告(処分庁) 東京都
代表者都知事 石原慎太郎
東京都市計画地区計画決定取消請求事件
訴訟物の価額 480万円
貼用印紙額 2万9000円
請求の趣旨
1 2009年6月22日付で東京都が決定・告示した東京都市計画地区計画決定(東京都告示第954号)を取消す
2 1が認められない場合,2009年6月22日付で東京都が決定・告示した東京都市計画地区計画決定(東京都告示第954号)が違法であることを確認する
3 訴訟費用は被告の負担とする
との判決を求める。
請求原因
第1 当事者
1 原告ら
(1)原告Aは,杉並区高円寺北1****(第一種低層住居専用地域)に居住しており,本件東京都市計画地区計画を定める土地の区域である中野区中野四丁目地区と,区画道路を挟んで隣接居住している者である。
(2)原告Bは,杉並区高円寺北1****(第一種低層住居専用地域)に居住しており,本件東京都市計画地区計画を定める土地の区域である中野区中野四丁目地区と,区画道路を挟んで隣接居住している者である。
(3)原告Cは,杉並区高円寺北1****(第一種低層住居専用地域)に居住しており,本件東京都市計画地区計画を定める土地の区域である中野区中野四丁目地区と,区画道路を挟んで隣接居住している者である。
(4)なお別紙1の地図上に,上記原告3人の居住地を記載した。
2 被告
被告東京都は,2009年6月22日付で東京都市計画地区計画(地区計画変更部分は,中野区中野四丁目地内。)を決定・告示した者である。
第2 東京都市計画地区計画(東京都告示第954号)の内容について
東京都市計画地区計画(東京都告示第954号)は,中野四丁目地区を対象区域とする計画であり,その具体的な内容は別紙2記載のとおりである。
第3 東京都市計画地区計画(東京都告示第954号)の処分性
1 第2記載のとおり,本件東京都市計画地区計画(東京都告示第954号)は,中野四丁目地区を対象区域とする計画であり,2007年4月6日付東京都市計画地区計画(東京都告示第596号)を変更する計画である。そのため以下においては,本件東京都市計画地区計画(東京都告示第954号)を「本件変更地区計画」と記す。
2 本件変更地区計画は,特定個人の権利義務に直接的変動を及ぼす具体的な制約であること。
(1)本件変更地区計画は地区整備計画を伴い,かつ各土地取得者は現に開発許可を取得する必要がある場合であるから,本件変更地区計画は特定個人の権利義務に直接的変動を及ぼす具体的な制約であるといえる。
すなわち,本件変更地区計画は同時に地区整備計画も伴う。そのため,①土地の区画形質の変更ないし建築を行なう際には,区長への届出が義務付けられ(都市計画法第58条の2第1項,同法第93条),区長は届出が計画に適合しない場合に勧告を発することができる(同法第58条の2第3項),また,②開発許可を要する行為については,(①の届出は不要だが)地区計画への適合性が開発許可の基準とされる(同法第33条第1項5号),さらに,③区は地区計画で定められた建築物の敷地・構造・用途に関する事項について,必要に応じて条例で規制することができ,条例が定められた場合はそれらが建築確認の対象となる(建築基準法第68条の2),加えて,④道路位置指定は,建築計画に即して行なわなければならなくなる(同法第68条の6)等の効果が生じる。このように,開発許可を要する場合か,条例が制定された場合には,地区計画に法的拘束力が生じることになる。
本件変更地区計画決定時点(2009年6月22日)においては,既に地区計画対象地の各取得者が決定しかつその用途も決定している(2007年5月~同年6月)上,開発行為がなされることも確定しているから,本件変更地区計画決定時点において,開発許可を要する場合であることが明らかであり,少なくとも本件変更地区計画の決定時点では,土地所得者に対する法的拘束力の発生が肯定できる。また,本件変更地区計画の敷地で建築行為が行われることも確定しているから,本件変更地区計画決定時点において,建築確認の要件として,本件変更地区計画に適合したものでなければならないという拘束力があることも肯定できる。
(2)また,本件変更地区計画の地区整備計画は,地区計画というよりもはや建築確認に近く,特定個人の権利義務に直接的変動を及ぼす具体的な制約が認められる。
すなわち,本件変更地区計画は,6つの建築物の外壁・高さ・幅が具体的に規制されており(別紙3参照),地区計画というよりもはや建築確認に近く,この点からも法的拘束力を肯定できる。すなわち,区域1-1には,明治大学の建築が予定されているが,この建物の敷地内の外壁位置,西立面,南立面,建物の高さ(約70m)・幅・奥行き,容積率の最高限度(10分の35),学生プラザの位置等は既に決定している。同様に,区域1-2には,帝京平成大学の建築が予定されているが,この建物の敷地内における外壁位置,北立面,東立面,建物の高さ(約55m)・幅・奥行き,容積率の最高限度(10分の35),学生ホール・ラウンジ等の位置等は既に決定している。さらに,区域4については,建物の外壁位置,立面,建物の高さ(55m)・幅・奥行き,容積率の最高限度(10分の56)が,区域5についても,建物の外壁位置,立面,建物の高さ(110m)・幅・奥行き,容積率の最高限度(10分の56)が既に決定している(以上,別紙3参照)。
(3)以上のように,本件変更地区計画は,まず,開発許可を要する時に開発許可の要件となり,そして建築確認を要する時には建築確認の要件としての規制の効力を有しているところ,本件地区計画の区域では,既に開発行為が行われること,建築行為が行われることが確定しているから,変更地区計画時点で,既に特定個人の権利義務に直接的変動を及ぼす具体的な制約であるといえる。
さらに,本件地区計画では,建築物の外壁位置,北立面,東立面,建物の高さ(約55m)・幅・奥行き,容積率の最高限度,学生ホール・ラウンジ等の位置等は既に決定している点で,相当具体的な地区計画であるから,通常の地区計画以上に,特定個人の権利義務に直接的変動を及ぼす具体的な制約であるといえる。
3 「建築確認や開発許可」の段階以前において,地区計画の違法性を争わせる必要があること。
建築確認や開発許可を争う段階にならないと地区計画を争うことを認めないのであれば,地区計画の内容を信じて土地を取得しようとする者にとって手遅れとなる可能性が存する(本件ではすでに土地を取得しており,もはや不意打ちであるが)。
したがって,少なくとも土地取得者に対する法的拘束力が伴う「地区整備計画のある地区計画」の場合には,地区計画決定段階においてその違法性を争わせる必要がある。
また,建築確認の段階で,民間確認機関に地区計画の違法性(裁量逸脱性)を審査させることを求めるのは,著しく困難である。
すなわち,建築確認取消の審査請求においては,本地区計画区域内だけ特別に緩和された建物高さ,容積率等は,所与の前提として扱われ,当該建物が緩和された容積率,建物高さに適合しているか否かにより適法違法の審査が行われるのみである。
4 以上のことから,本件変更地区計画は,一定範囲の地域等を対象とするものの,その法的拘束力は不特定多数者に向けられた一般的抽象的な制約ではなく,特定個人の権利義務に直接的変動を及ぼす具体的な制約といってよいだけではなく,さらに「建築確認や開発許可」の段階以前において,地区計画の違法性を争わせる必要が認められる。
故に,本件変更地区計画決定には処分性が肯定されなければならない。
第4 本件変更地区計画決定の取消訴訟の原告適格
1(1)本件変更地区計画区域は,原告らが区画道路を挟んで隣接する部分において再開発等促進区でもある。
そして,都市計画法第13条第1項14号ロによると,再開発等促進区を定める地区計画を定める場合は,「第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域については,再開発等促進区の周辺の低層住宅に係る良好な住居の環境の保護に支障がないように定めること」と規定されており,地区計画対象地周辺の低層住宅を所有・居住する者に対して,「良好な住居の環境」の利益を保護すべきとされている。
(2)ここで注意すべきは,上記「良好な住居の環境」は,第一種低層住居専用地域の場合に保護される利益である「低層住宅に係る良好な住居の環境」(都市計画法第9条第1項)の意義とは異なる(都市計画法第13条第1項14号ロの「良好な住居の環境」は,専ら一般的な公益の中に吸収解消されず,個々人の個別的利益として保護すべきである。),という点である。
すなわち,第一種低層住居専用地域における「良好な住居の環境」(都市計画法第9条第1項)は,「地域」という広がりを持つ性質に照らし,あくまで一般的公益といわざるを得ないが,都市計画法第13条第1項14号ロにおいて考慮されるべき「周辺の低層住宅」は,地区計画の影響を直接に受ける客体であることが想定されており,あくまで限定された客体であるため,ここで保護されるべき「良好な住居の環境」は,一般的公益の保護実現を目的として機能することによる反射的利益を超え,もはや個々人の個別的利益と解すべきである。
(3)以上のことから,再開発等促進区の周辺の第一種ないし第二種低層住宅に係る「良好な住居の環境」を享受する利益は,「法律上の利益」(行訴法第9条第1項)に該当し,その主体である「周辺の低層住宅」の所有者ないし居住者に本件変更地区計画の原告適格が認められると解すべきである。
2 それでは,原告らは上記「周辺の低層住宅」の居住者に該当するか。
この点,本地区計画の地域は第1種低層住居専用地域ではないものの,原告らの居住する杉並区高円寺北1丁目は第1種低層住居専用地域に指定されているから,都市計画法第13条第1項14号ロの「第1種低層住居専用地域…については」に当たるといえる。そして,原告らは,本件変更地区計画の対象地と区画道路を隔てて居住している(別紙1参照)のであるから,本件変更地区計画のとおり緩衝帯型オープンスペースの設置がされない場合,①隣地の大規模建物から圧迫感を受け,また②いわゆる日照被害(別紙3に示される本件地区計画変更案記載の建物が建築された場合,原告A及び原告Bの住居は,甲1号証に示されるように,冬至において1時間半~2時間日影が生ずることが明らかである)を被り(原告Aが住宅屋上に設置する太陽光発電も著しく限られることとなる),③隣地からの騒音によって生活が妨害され,④通風が阻害され,⑤隣地において大火災や大地震等の災害が発生した際に原告らの生命・身体に被害を受けるおそれがある等,「良好な住居の環境」に対し,反復・継続した著しい影響を直接的に受けうる。
したがって,原告らはいずれも「周辺の低層住宅」(同法第13条第1項14号ロ)の所有者ないし居住者に該当することは明らかである。
3 以上のことから,原告らは「周辺の低層住宅」の所有者ないし居住者に該当し,本件変更地区計画の原告適格が認められる。
第4 本件変更地区計画決定の違法性(裁量権逸脱濫用)
1 地区計画決定における行政裁量にも限界があること
都市計画法は,地区計画について,「地区施設」(ここには『緩衝帯型オープンスペース』も含まれる。)を都市計画に定めるものとし(同法第12条の5第2項),また,地区整備計画について,「地区計画の目的を達成するために必要な」場合,「地区施設の配置及び規模」を定める(同法第12条の5第7項)としている。
そして,地区計画は,「建築物の建築形態,公共施設その他の施設の配置等からみて,一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し,開発し,及び保全するための計画」(同法第12条の5第1項)であり,また地区計画を定めるにあたっては,「公共施設の整備,建築物の建築その他の土地利用の現状及び将来の見通しを勘案し,当該区域の各街区における防災,安全,衛生等に関する機能が確保され,かつ,その良好な環境の形成又は保持のためその区域の特性に応じて合理的な土地利用が行われることを目途」(同法第13条第1項14号柱書き)とされなければならないと規定されている。
さらに,本件のような再開発等促進区を定める地区計画の場合には,「土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の増進とが図られることを目途として,一体的かつ総合的な市街地の再開発又は開発整備が実施されることとなるように定めること」(同法第13条第1項14号ロ)と規定されている。
しかし,何が「区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境」(同法第12条の5第1項)で,何が「土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の増進」(同法第13条第1項14号ロ)であるか否かについては,一義的に明らかとなるわけではない。したがって,上記基準に従って地区施設(『緩衝帯型オープンスペース』も含まれる。)の規模,配置等に関する事項を定めるにあたっては,当該地区施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,都市政策的,専門技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。
もっとも,このように行政に広範な裁量を認めざるを得ない場合であっても,計画の決定又は変更における裁量権行使の前提として,Ⅰ)その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,Ⅱ)事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる(参照・最高裁2006年11月2日第一小法廷判決・民集60巻9号3249頁)。
2 本件変更地区計画決定が行政裁量権の逸脱濫用にあたること
(1)本件変更地区計画決定について,決定の基礎とされた重要な事実に誤認があるか否かは,これまで原告らの質問等に対して,被告が事実関係を明らかにしないことから現在は不明である。
しかし,被告が事実関係を明らかにしない合理的な理由は全くないにもかかわらず被告が事実関係を明らかにしない以上,重要な事実の基礎に被告の誤認が認められる可能性は高い(たとえば,原告らが2008年11月27日に,風害・景観等周辺住民への配慮を東京都に要請している点(甲2号証の1)に関して,東京都は2008年12月24日付の回答書(甲2号証の2)において,大要,①事業者の調査によれば植栽等の対策を行なうことによって風環境が概ね改善されると,都としては確認した,②検証結果についても,今後事業者から住民に説明される様にしたい,と回答している。しかし,訴え提起時点において,原告らに対していまだに検証結果は明らかにされていない。
そもそも,このような回答は事業者への信頼を大前提としているが,事業者が自らの着工に不利な調査結果を作成するはずがなく,東京都がこれらの事業者による風環境の調査についてなんらの根拠なく地区計画の基礎としているのであれば,重大な問題である。)。
以上のこれら重要な事実の基礎に誤認があるか否かについては,被告から本件処分の内容,処分の根拠となる法令の条項,処分の原因となる事実その他処分理由を明らかにする資料の提出がなされた段階で,明らかにしていく予定である。
(2)また,事実に対する評価についても,被告は同様に判断根拠を明確にしておらず,同様に被告の主張を待って今後裁判の中で明らかにしていきたい。
(3)さらに被告は,以下のとおり,判断過程において考慮すべき事情を考慮していないことが,明かである。
ア まず,同法第13条第1項14号ロによれば,被告は本件変更地区計画の決定にあたって,再開発等促進区の周辺の低層住宅(第一種低層住居専用地域等)に係る良好な住居環境への支障がないよう考慮しなければならない。
また,被告は,地区計画を都市計画に定める場合,都市の住民が健康で文化的な都市生活を享受することができるよう配慮しなければならない(同法第13条第5項,同条第2項)。
かかる規定からすれば,被告は,第1種低層住居専用地域に居住する原告ら再開発等促進区の周辺の低層住宅の良好な住居環境の保護に支障がないように十分考慮し,地区計画を定めなければならないはずである。にもかかわらず,被告は原告らの「良好な住居環境」への影響について,全く考慮していない。
イ 被告が原告らの「良好な住居環境」への影響を全く考慮していないことを基礎付ける理由について。
(ア)まず,「中野駅周辺まちづくりガイドライン2007」は,警察大学校等跡地を中心とした土地利用ないし都市基盤整備を誘導するものであり(同ガイドライン1頁),ガイドライン制定以降の地区計画等の決定がなされる場合も予定している。
また,本件変更地区計画における「地区計画の目標」においても,「まちづくりガイドラインを策定し,・・・地区で一体の開発整備を推進する。」と記載され,「まちづくりガイドライン」を前提としている。
この点,「中野駅周辺まちづくりガイドライン2007」は,原告らの居住地と区域1との間に緩衝帯型オープンスペースの設置を計画していた(同ガイドライン45頁)。
そして,この緩衝帯型オープンスペースに関し,同ガイドライン43頁は,「杉並区に隣接する西側隣地境界付近には,適切なオープンスペースを設けるなどにより,周辺環境との調和を図るとともに,緩衝帯としての機能確保を図る。」とし,杉並区に隣接する西側隣地境界付近に緩衝帯型オープンスペースの設置を予定していたことが明かである。
このようなガイドラインが存在する以上,被告が同ガイドラインと異なる地区計画を作成する場合は,住民らに対して相当の説明責任を尽くす必要がある。
それ故,本件の様に行政からの説明がない場合は,被告が緩衝帯型オープンスペースの設置,すなわち「区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境」(都市計画法第12条の5第1項)について考慮しなかったと言わざるをえない。
(イ)次に,この緩衝帯型オープンスペースは,その設置目的が,対象区域と隣接する杉並区高円寺北の住居の環境との調和にあることからすると,再開発等促進区について規定する都市計画法第13条第1項14号ロが「周辺の低層住宅に係る良好な住居環境への支障がないように定めること」と規定することの具体化として,緩衝帯型オープンスペースの設置が考慮されたものと考えられる。
したがって,この緩衝帯型オープンスペースを合理的な理由もなしに設けないのは,同法第13条第1項14号ロの「良好な住居環境への支障がないように定めること」を全く無視するものである。
(4)以上のことから被告は,本件変更地区計画決定の際に「区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境」(同法第12条の5第1項)を考慮すべきであるにも考慮していないのであり,裁量権の逸脱が認められ,本件変更地区計画決定は違法である。
第5 確認の利益の存在
1 原告らは,本件変更地区計画決定に処分性が認められないのであれば,行訴法第4条後段に基づいて本件変更地区計画決定違法確認の訴えを行なう。
2 即時確定の現実的必要性(紛争の成熟性)
(1)「中野駅周辺まちづくりガイドライン2007」に反して,原告らの居住地と本件変更地区計画対象地との間に緩衝帯型オープンスペースが設置されない場合,原告らは①隣地の大規模建物から圧迫感を受け,また②いわゆる日照被害を被り(太陽光発電も著しく限られる),③隣地からの騒音によって生活が妨害され,④通風が阻害され,⑤隣地において大火災や大地震等の災害が発生した際に原告らの生命・身体に被害を受けるおそれがある等,「良好な住居の環境」に対して,反復・継続した著しい影響を直接的に受けうる。
(2)計画段階において緩衝帯型オープンスペースの設置が予定されていない場合,土地所有者(区域1)が自ら進んで緩衝帯型オープンスペースを設置するはずがなく,開発許可が出た段階で取消訴訟を行なってもいわゆる執行不停止の原則ゆえに,もはや救済上手遅れになる可能性が高い(執行停止の要件は厳格であり,ほとんど認められない。)。
加えて,裁判が長期化する可能性も高く,開発許可が出た段階での取消訴訟しか認めないのであれば,いわゆる事情判決がなされ,原告らの目的が達成されない可能性が高い。
しかもこの段階で係争するとしても,争点は開発許可の違法性ではなく,もっぱら地区計画の違法性が問題となるのであり,現段階で係争できるとすることが合理的である。
故に,開発許可が出た段階ではなく,計画段階で地区計画の違法確認の訴えを認める必要が高い。
3 以上のことから,本件変更地区計画決定違法確認訴訟について,確認の利益が認められる。
第6 結論
以上,本件変更地区計画決定は,被告の裁量権を逸脱した違法があり,直ちに取り消されるべきである。
以上
添付資料
1 訴状副本 1通
2 証拠説明書 各1通
3 甲号証(写) 各1通
4 訴訟委任状 3通
2009年12月6日日曜日
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