2009年12月6日日曜日

PC0911a 原告準備書面(A1)(公園)

図1 「1-2計画の位置づけ」の体系表は,都市マスの一部と明示

図2 中野区長の巻頭の言葉はみどりの基本計画が都市マスの一部と明言

平成21年(行ウ)第253号 都市計画決定違法確認請求事件

原告 A 外3名

被告 中野区

準備書面(1)

2009年(平成21年)11月13日


東京地方裁判所民事3部B1係 御 中

原告ら訴訟代理人

弁 護 士   日置 雅晴
同      富田 裕
同      花澤 俊之

第1 訴訟要件  

1 公法上の法律関係が存在すること
 

(1) 原告らと被告の法律関係


 被告は,「原告らの提起した本件訴えは,原告らの権利ないし法律上の地位といった法律関係を離れて単に本件決定の違法の確認を求めることにすぎないものであるから,公法上の法律関係に関する訴訟とはいえず,同条後段の定める当事者訴訟の要件に合致しない。」と主張する。

 しかし,内閣総理大臣答弁書(内閣衆質159第65号)によると,「公法上の法律関係に関する確認の訴え」を明示した趣旨について,「行政立法,行政計画,行政指導等のそれ自体としては抗告訴訟の対象とならない行政の行為を契機として争いが生じた公法上の法律関係に関し確認の利益が認められる場合については,現行の行政事件訴訟法(昭和37年法律139号)においても,当事者訴訟として確認の訴えが可能であるが,その活用を図るため,『公法上の法律関係に関する確認の訴え』を当事者訴訟の一類型として明記する」とされている。

 この内閣総理大臣答弁書からすると,公法上の法律関係に関する確認訴訟は,まさに本件の都市計画決定のような処分性の認められない行政計画を争うための訴訟類型であり,本件について,公法上の法律関係でないという理由で訴えを認めないとすると,特に平成16年に法律改正し,行政事件訴訟法4条後段を設けた意義が全く失われてしまう。

 また,立法者の意思によると,公法上の法律関係に関する訴訟(行政事件訴訟法4条後段)は,「多様な関係に応じた実効的な権利救済を可能とする趣旨」で設けられた訴訟類型である。すなわち,衆議院法務委員会は,平成16年5月14日,「公法上の法律関係に関する確認の訴えについては,権利義務などの法律関係の確認を通じて,取消訴訟の対象となる行政の行為に限らず,国民と行政との間の多様な関係に応じた実効的な権利救済を可能とする趣旨であることについて,周知徹底を努めること。」との附帯決議を行い,同委員会は,最高裁判所がこのことについて格段の配慮をすべきとしている(甲3)。

 また,参議院法務委員会も,平成16年6月1日,「公法上の法律関係に関する確認の訴えについては,これまでの運用にとらわれることなく,その柔軟な活用を権利義務などの法律関係の確認を通じて,取消訴訟の対象となる行政の行為に限らず,国民と行政との間の多様な関係に応じた実効的な権利救済を可能とする趣旨であることについて,周知徹底を努めること。」との附帯決議を行い,同委員会は,最高裁判所がこのことについて格段の配慮をすべきであるとしている(甲3)。

 ここで,立法者は,「多様な法律関係」という言葉を用いることで,国民と行政との関係を幅広くとらえようと考えていると読み取れるし,「実効的な権利救済を可能とする趣旨」という説明がなされていることからは,権利救済の必要性の観点から「公法上の法律関係」の有無を判断しようとする趣旨と読み取ることができる。

 そうであるならば,国民の権利の実効的な救済を必要としている場合において,「公法上の法律関係」の意味を狭くとらえ,「公法上の法律関係」の不存在を理由として,訴えを却下していたのでは,本来,国民の権利救済のために設けられた制度が全く国民の権利救済に役立たないことになり,本末転倒となる。

 そこで,この「公法上の法律関係」の意味は,原告被告間に直接の法律関係がある場合に限定されず,国民の権利救済の観点から,国民の権利救済の必要性がある場合には,なるべく広く認めるべきである。

 本件について見れば,原告A及びDが杉並区高円寺北1丁目に居住し,原告Bが中野区新井2丁目に居住し,原告Cが中野区野方1丁目に居住しているが,これら原告はいずれも,東京都震災対策条例47条1項の規定に基づき,東京都知事によって,「中野区役所」一帯を広域避難場所に指定された者であり,震災時において,中野区が都市計画決定した中野中央公園に避難することが予定されている者である。

 そうだとすると,原告らは,いずれも,中野区が都市計画決定した中野中央公園に避難する利益が法律上保障されているが,その利益が中野区の都市計画決定如何によって左右されるという関係にあるので,「公法上の法律関係」があるといえる。

 そして,この結論は,原告らの権利救済の必要性からも是認される。すなわち,当初,中野区みどりの基本計画において,中野区役所一帯広域避難場所の中核として,約4ヘクタールの公園が予定されていたのが,本件都市計画決定によって,約1.5ヘクタールに縮小されたということは,原告らが,災害時に避難する場所の面積が大幅に減少したことになるから,原告らの避難の法的利益,即ち,原告らの生命,身体の安全という法益が大幅に侵害されたことになる。

 そうすると,このような場合,原告らの避難の法的利益が害されるのを救済する必要性が高いから,「公法上の法律関係に関する訴訟」を認める必要性が高い。

(2) 三井グラウンド訴訟で認められた原告適格

 「公法上の法律関係」の要件について,原告らは,原告が訴訟を遂行する適格を有するか(原告適格)にかかわる要件であると考えている。

 そして,処分性の認められる事案においては,東京地方裁判所平成20年5月29日判決(平成18年(行ウ)第226号,三井グラウンド訴訟)が,避難場所を利用することが予定されている地域に居住する住民に原告適格を認めている。

 そうであるならば,本件においても,原告らに原告適格が認められるし,「公法上の法律関係」が認められる。

 以下,三井グラウンド訴訟について簡単に説明する。

 三井グラウンド訴訟においては,原告らが,土地区画整理事業の施行認可の取消を求めるについて法律上の利益を有するかが争われた。この点について,裁判所は,土地区画整理法の関係法令として都市計画法,東京都震災対策条例をあげるとともに,土地区画整理事業の認可された場合に害されることになる避難場所の周辺住民の利益の内容として生命,身体の安全という住民の個別的利益をあげ,土地区画整理法及び関係法令の趣旨,目的,土地区画整理事業の認可を通して保護しようとしている利益の内容,性質を考慮すれば,土地区画整理法は,震災に当たり生命,身体に被害を受けるおそれのある個々の住民の被害から免れる利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨であるとした。そして,避難場所を利用することが予定されている地域に居住する住民は法律上の利益を有するものとして原告適格を認めた。

 本件においても,原告らが「訴状の補正」8頁以下において主張した通り,根拠法令としての都市計画法,関係法令としての東京都震災対策条例があり,都市計画決定に基づき侵害される避難場所の周辺住民の利益の内容は生命,身体の安全という住民の個別的利益である。

 そうだとすると,都市計画法は,震災に当たり生命,身体に被害を受けるおそれのある個々の住民の被害から免れる利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨である。そこで,避難場所を利用することが予定されている地域に居住する原告らに原告適格が認められるし,「公法上の法律関係」が認められる。

2 確認の利益の存在

(1) 被告は,答弁書2(2)において,「原告らも含めて住民の権利義務に直接影響を与えるものではない。したがって,本件決定の確認の利益がない。」と主張する。

 しかし,この主張の前段の「住民の権利義務に直接影響と与えるものではない」は,処分性の有無であって,後段の確認の利益がないことの理由とはならない。原告らは,処分性がないことを前提としつつ,紛争の成熟性があることを理由に,確認の利益の存在を主張し,実質的当事者訴訟(行政事件訴訟法4条後段)として認められると主張しているのだから筋違いの議論である。

 そして,原告らは,紛争の成熟性があることについて「訴状の補正」の4~8頁で説明したが,反論されていない。

(2)
 被告は,答弁書2(2)(3頁)において,「損害賠償請求訴訟ないし差止訴訟により端的にその権利侵害による損害の回復を求めることが可能なのだから,本件訴えのほかに適切な訴訟手段がないとはいえない」と主張する。

 しかし,損害賠償請求訴訟は,損害が発生してから訴えを提起するものであるところ,損害の発生とは,中野中央公園の面積が当初よりも小さいことで,避難の利益が実際に害されることを意味する。

 そして,避難面積の縮小とは,災害時の生命身体といった金銭に換え難い法益の侵害を意味するから,損害賠償では回復不可能である。

 また,差止訴訟に関していうと,被告は,本来公園となるべき場所に建築行為がなされる場合の建築確認の差し止めを指していると思われる。しかし,公園の

 周囲には多数の建築物が存在する中で,公園の面積と建築物の存在との関連性が間接的なものでしかないことから,公園の周囲の建物のうち,どの建物が本来公園となるべき部分の面積を侵害しているか明らかでなく,どの建物の建築確認の差止請求を行えばよいか特定が不可能という問題が生じる。結局,差止訴訟では紛争解決に全くならないのである。

 また,仮に,建築確認の差止訴訟において,先行行為としての都市計画決定の違法を争いうるとしても,建築確認はその多くが民間建築確認機関によりなされているところ,民間建築確認機関相手に行政が行った都市公園の都市計画決定の違法を問うことは妥当性に欠ける。

第2 本件都市計画決定の違法性

1 都市計画法18条の2第4項違反


(1) 「中野区みどりの基本計画」は「中野区都市計画マスタープラン」の一部


ア みどり基本計画の「1-2計画の位置づけ」は,都市マスの一部と明言


 都市計画法18条の2第4項は,「市町村の定める都市計画は,基本方針に即したものでなければならない。」と規定している。

 ここで,「市町村の定める都市計画」とは,公園を含む都市施設や地区計画など,都市計画決定により定められる都市計画を指すから,本件の中野中央公園の都市計画決定もこれに当たる。

 そして,ここで,「基本方針」とは,市町村の定める都市計画マスタープランを指し,本件に関していうと,中野区都市計画マスタープランがこれに当たり,被告も,このことについては争っていない。

 そうすると,都市計画法18条の2第4項を本件に当てはめると,「中野中央公園の都市計画決定は,中野区都市計画マスタープランに即したものでなければならない。」ということになる。

 そして,仮に,「中野区みどりの基本計画」(乙6)が中野区都市計画マスタープランの一部であるとすると,都市計画法18条の2第4項は,「中野中央公園の都市計画決定は,中野区みどりの基本計画に即したものでなければならない。」ということになる。

 そこで,「中野区みどりの基本計画」が中野区都市計画マスタープランの一部をなすものかが問題となるが,「中野区みどりの基本計画」の「1-2 計画の位置づけ」からすると,「中野区みどりの基本計画」は,中野区都市計画マスタープランの一部である。

 すなわち,「中野区みどりの基本計画」(乙6)の3頁,「1-2 計画の位置づけ」の中で,「中野区みどりの基本計画」は,「中野区都市計画マスタープランの「環境と共生するまちづくり」分野のみどりに関する個別計画の性格をあわせ持つもの」と記載されているから,「中野区みどりの基本計画」は,「中野区都市計画マスタープラン」の一部をなしていると解されるのである。

 そうすると,都市計画法18条の2第4項によると,「中野中央公園の都市計画決定は,中野区みどりの基本計画に即したものでなければならない。」ことになる。

イ 「1-2計画の位置づけ」の体系表は,都市マスの一部と明示

(図1参照)

 上の図は,「中野区みどりの基本計画」の「計画の位置づけ」に載せられている体系図である。この図からは,中野区みどりの基本計画が中野区都市計画マスタープランの個別化計画として,中野区都市計画マスタープランをより詳細化した内容となっていることを読み取ることができる。

 そうだとすると,中野区みどりの基本計画は中野区都市計画マスタープランの一部であり,都市計画法18条の2第4項に当てはめると,「中野中央公園の都市計画決定は,中野区みどりの基本計画に即したものでなければならない。」ことになる。

ウ 中野区長の巻頭の言葉はみどりの基本計画が都市マスの一部と明言

 みどりの基本計画(乙6)の巻頭は,中野区長の言葉により始まっているが,そこでは,中野区みどりの基本計画が中野区都市計画マスタープランの一部であることが述べられている。以下,引用する。

(図2参照)

 この区長の言葉からすると,「中野区みどりの基本計画」は,中野区都市計画マスタープランの策定に際して寄せられたみどりに関する提案をもとに,中野区都市計画マスタープランの具体化,詳細化の一環として,中野区都市計画マスタープランの一部として策定されたことを読みとることができる。

 そうすると,中野区長の言葉からも,中野区みどりの基本計画は中野区都市計画マスタープランの一部であり,都市計画法18条の2第4項からすると,「中野中央公園の都市計画決定は,中野区みどりの基本計画に即したものでなければならない。」ことになる。

エ この点について,被告は,準備書面(1)の6頁において,「中野区みどりの基本計画」は,「中野区都市計画マスタープラン」の一部ではないと主張する。

 しかし,前記ア~ウからすれば,「中野区みどりの基本計画」は,「中野区都市計画マスタープラン」の一部をなしているのは明らかである。

(2) 1.5haの公園都市計画決定は,みどりの基本計画のいう4haに反すること

 中野区みどりの基本計画(乙6)の14頁において,「(中央部防災公園の整備推進) 中野区役所一帯の広域避難場所の中核として,警察大学校等移転跡地に約4ヘクタールの公園を都市計画決定し,整備推進に努めます。」と明記していることは,被告も認めている(乙6の14頁)。

 そうだとすると,本件都市計画決定は,1.5ヘクタールの公園を都市計画決定するものであり,4ヘクタールの公園の都市計画決定を記載する中野区みどりの基本計画に明確に反している。

(3) 都市計画法18条の2第4項違反

 (1)で述べたように,都市計画法18条の2第4項を本件に当てはめると,「中野中央公園の都市計画決定は,中野区みどりの基本計画に即したものでなければならない。」ことになる。

 そうだとすると,都市計画法18条の2第4項によると,中野中央公園の都市計画決定が定める公園の面積は,中野区みどりの基本計画の内容に即して,約4ヘクタールを確保しなければならないことになるはずである。

 しかし,本件都市計画決定では,中野中央公園の面積を1.5ヘクタールしか確保しなかった。

 これは,公園面積1.5ヘクタールを決めた中野中央公園の都市計画が,公園面積約4ヘクタールを要請する中野区みどりの基本計画に即していなかったことを意味する。

 そうだとすると,本件都市計画決定は,都市計画法18条の2第4項に違反していることが明白である。

2 東京都の地域防災計画の避難面積1人1㎡に違反する違法

(1) 東京都地域防災計画上,1人1㎡の避難面積は最低限度であること

 東京都の地域防災計画 震災編の236頁(第3部 災害応急・復旧対策計画,第9章 避難者対策,第2節 避難場所・避難道路の指定及び安全化,1 避難場所・避難道路の指定,(1)避難場所の考え方)によると,「避難場所は,地区割当計画の避難計画人口に対して,避難場所内の建物などを除き,震災時に拡大する火災によるふく射熱の影響を考慮して算定した利用可能な避難空間を,原則として1人あたり1㎡確保する。」と,1人あたり1㎡確保することとされている。

 この,1人当たり1㎡とは,人が立っている人々の間をやっと通り抜けることができる限界の人口密度であり,混雑時の駅のプラットホームがほぼこれに相当する。

 もっとも,この場合,避難者が避難地内部で動き回る余地がほとんどなく,内部でのちょっとした混乱も吸収する余裕がないと考えられるため,一人当たりの有効避難面積を2㎡以上とすることが望ましいといわれている。

(2) 本件では1人当たり1㎡さえクリアできない違法があること

 現況の中野区役所一帯の広域避難場所について,東京都の地域防災計画によると,避難有効面積は,102,900㎡であるとされている。そして,東京都の地域防災計画によると,この広域避難場所を利用する住民の数は96,000人であるとされている。そこで,1人当たりの有効避難面積は,102,900㎡÷96000人=1.07㎡/人とされている。

 これは,防災基本計画のいう1人1㎡をわずかに上回っているにすぎない数値であり,必要最低限のレベルをかろうじて満たしているにすぎない。

 東京都23区の現在の1人当たりの避難有効面積は,平均で3.4㎡/人であるのと比較すると,中野区の1人当たりの避難有効面積は23区平均の約3分の1程度でしかない。

 このように,もともと1人当たりの避難面積が狭い深刻な状況のもと,本件において,さらに追い打ちをかけるように,中野中央公園の面積が当初予定の約4ヘクタールから,1.5ヘクタールに縮小されることになった。

 そして,中野中央公園は避難場所の中核とされていたことからすると,公園の面積の2.5ヘクタールの減少は,有効避難面積の2.5ヘクタール減少を意味すると考えられる。

 ここで,有効避難面積が現況から2.5ヘクタール減少し,102,900㎡から77,900㎡になったとすると,一人当たりの有効避難面積は,77,900㎡÷96000人=0.81㎡/人,即ち,1人1㎡という最低限のラインさえクリアできなくなってしまうことになる。

 これは,東京都の防災基本計画に反する点で違法であるだけでなく,実質的に見ても,災害時において,住民の生命,身体に対する重大な被害が生ずるおそれがある点でも違法である。

(3) 民有地では確保したことにならないこと

 被告は,準備書面(1)7頁において,「そもそも避難場所は,火災等の災害発生時に避難をする場所であり,避難場所は,公園のみならず,公共空地でもその機能を果たしうるものである。」と主張する。

 しかし,被告の主張する「公共空地」とは,私人(民間企業)の所有する空地を意味していると考えられる。この民有空地については,将来にわたり防災公園の機能を有する永続的な空地として存在する担保は何らなされていない。

 具体的には,民有空地を所有する事業者が,民有空地に建築計画を意図した場合,これを拒むことはできないので,建築確認が下りて建築できることになる。このように,将来的に建築物が建築されたり,駐車場や駐輪場になることを禁止できない民有空地に頼った現行の計画では,防災機能を確保したとはいえない。

 被告は,準備書面(1)の7頁において,「新たに,約2ヘクタールの避難可能なオープンスペースが整備されることになっており,1.5ヘクタールの中野中央公園と合わせて約3.5ヘクタールというほぼ同等の避難有効面積が確保される」と主張している。

 しかし,被告が主張する,約2ヘクタールのオープンスペースとは,原告が前記(1)で述べた民有空地であるから,将来的に空地として防災機能を有する担保が何らなされておらず不十分である。

 また,被告が主張する約2ヘクタールのオープンスペースが,果たして避難場所として機能するか疑問である。被告に対し,約2ヘクタールのオープンスペースの位置,面積を図面上に示して提示することを求める。

 被告は,準備書面(1)の7頁において,「被告は,建物の不燃化,建物相互のオープンスペースの確保及び樹木の適正配置等について指導誘導していく方針である」と主張する。

 被告の指導誘導の具体的内容及び強制力のない指導誘導に実効性を持たせるべく被告のとる措置の具体的内容,仮に,民間事業者が指導誘導に従った場合,火災時における被害が減少する理由を明らかにすることを求める。

(4) オープンスペースに関する資料提示の要請

 被告に対し,以下について明らかにすることを求める。

 被告は,準備書面(1)5頁8,アにおいて,「防災公園は,隣接する約0.5ヘクタールの公開空地等と合わせ,組織的な防災訓練など区民等の防災活動に利用しうる,およそ2ヘクタールの防災空間を確保する」と主張する。

 この点に関し,0.5ヘクタールの公開空地の位置を平面図上で示されたい。

 被告は,準備書面(1)5頁8,イにおいて,「上記2ヘクタールの防災空間と周辺のオープンスペースなどをあわせて,3~4ヘクタールの緑地空間とし,環境・防災上の機能を発揮させる」と主張する。

 この点に関し,周辺のオープンスペースの位置を平面図上で示すとともに,その面積が1ヘクタールなのか,2ヘクタールなのか,具体的な面積を数値で示されたい。「3~4ヘクタール」とは,実際のところ,何ヘクタールなのか具体的数字で示されたい。

 被告は,準備書面(1)5頁,10において,「新たに,公共空地約1.5ヘクタール,緑地0.1ヘクタール,広場約0.05ヘクタール,歩行者通路0.156ヘクタール及び歩道状空地0.18ヘクタールの合計2ヘクタールが,災害時に避難可能なオープンスペースとして確保されることになった」と主張する。

 この点に関し,公共空地,緑地,広場,歩行者通路,歩道状空地のそれぞれの場所を平面図上で示されたい。

 被告は,準備書面(1)7頁4において,「避難場所は,公園のみならず,公共空地でもその機能を果たしうるもの」と主張する。

 被告が主張する「公共空地」とは,民有地か,公有地かを明示することを求める。さらに,仮に,「公共空地」が民有地であった場合,公共空地が避難場所として機能し続けることを担保するために,どのような施策が予定されているのか明らかにすることを求める。

 被告は,準備書面(1)7頁4において,「新たに,約2ヘクタールの避難可能なオープンスペースが整備されることになっており,1.5ヘクタールの中野中央公園と合わせて約3.5ヘクタールというほぼ同等の避難有効面積が確保される」と主張する。

 この点に関し,新たな2ヘクタールの避難可能なオープンスペースの位置を平面図上で示すとともに,このオープンスペースが複数のオープンスペースの集合である場合,それぞれのオープンスペースの面積を示すことを求める。さらに,被告は,準備書面(1)5頁の8,アの中で「約0.5ヘクタールの公開空地等」という言葉を用いているが,新たな2ヘクタールの避難可能なオープンスペースの中には,この0.5ヘクタールの公開空地を含むのか,含まないのか明らかにすることを求める。

(5) 避難面積,避難人口に関する資料提示の要請

 原告らは,公園に代わるオープンスペースの存在だけでなく,今後とも広域避難場所である中野区役所一帯において,避難有効面積102,900㎡を確保できるか,避難人口の増加により避難の安全の確保に支障が生ずるおそれについて懸念している。

 そこで,被告に対し,以下の資料の提出を求める。

 現況の避難有効面積算定の基礎となる資料,即ち,図面上に避難有効面積と評価されるエリアを明示し,避難場所の面積の合計が102,900㎡となることを示すことを求める。

 本件都市計画決定の後,どれだけの避難有効面積を確保できるか疑問である。

 そこで,被告に対し,中野区役所一帯において,今後予定される避難有効面積と評価されるエリアを図面上明示し,この避難有効面積の合計がどれだけの広さになるのか示すことを求める。

 さらに,中野区役所一帯に避難する避難人口の合計は,現況では96,000人とされているが,その人口は昼間の人口をいうのか,夜間の人口をいうのか,どちらかに当たるとした場合のその理由について,明らかにされたい。

 中野区役所一帯に建物が建築されたことにより,このエリアで働く人口が大幅に増加することになると思われるが,被告は,中野区役所一帯においてオフィスビルが建築されることにより,中野区役所一帯に避難する避難想定人口が昼間の人口,夜間の人口でどれだけになると予測しているか明らかにされたい。

 1人当たりの避難面積を算定するための避難人口は,昼間の人口で算定するのか,夜間の人口で算定するのか,どちらかに当たるとした場合のその理由について明らかにされたい。

 中野駅周辺での買い物客,電車の乗客の中野区役所一帯への避難計画はどのように考えられているか明らかにされたい。

 原告らの調べたところによると,東京都都市整備局市街地整備部企画課は,2005年10月4日~2006年3月31日までの間,首都大学東京大学院都市科学研究科教授(都市防災計画学)の中林一樹委員長を中心とする避難場所安全性等調査研究委員会に対し,避難場所等の安全性に関する調査研究を委託し,その結果,2007年2月17日,首都大学東京産学連携センターより「避難場所の安全性に関する調査」という名の報告書が出されている。

 原告らは,この「避難場所の安全性に関する調査」報告書において,東京都地域防災計画のいう避難面積1人当たり1㎡の根拠が述べられていると考えている。

 そこで,この「避難場所の安全性に関する調査」の報告書の提出を要請する。

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